研究概要 |
変形性顎関節症患者11名(患者群)と健康被験者(対照群)10名の顎関節滑液中のsTNFRs濃度と,患者群におけるOAレベル,顎関節部の疼痛,開口量との関連を検討した. 1.患者群のsTNFR-I,-II濃度は対照群のそれらと比べ有意に高かった. 2.両群ともにsTNFR-I濃度は,sTNFR-II濃度より有意に高かった. 3.sTNFR-I濃度は,OAレベルと正の相関があり,sTNFR-II濃度は,咀嚼時疼痛と負の相関,開口量と正の相関があった. 変形性顎関節症の病態におけるsTNFRの役割を検討するため,変形性関節症にけるTNFR発現とサイトカインによるsTNFR産生に対する影響を調べた. 1.変形性膝関節症モデルの膝関節軟骨におけるTNFR発現は,対照側,患側いずれの組織においてもTNFR-I,II陽性細胞が認められ,患側で高発現していた. 2.ラット膝関節軟骨細胞へのIL-1β,TNFα刺激後における,tnfr発現量とsTNFR濃度を定量した結果,tnfr-I発現は,刺激による影響を受けず,tnfr=II発現は,刺激24時間後に無刺激時の約12倍となり,sTNFR-I濃度は,刺激48時間後に有意な上昇がみられるも,無刺激時の約2倍で,sTNFR-II濃度は,約5倍となった. 以上より関節軟骨細胞では,TNFR-Iは恒常的に,TNFR-IIは炎症性サイトカインによる影響を受け発現し,両者はsheddingにより可溶型として細胞外へと遊離してくることがわかった.滑液データとあわせて考えると,sTNFR-II濃度が高いほど症状が緩やかであった点から,なかなか症状の緩解しない重症の変形性顎関節症患者では,このsTNFR-II産生のメカニズムになんらかの異常がある可能性があり,この場合エタネルセプトのような分子標的治療薬の関節腔内注入療法の効果が期待できるのではないかと考える.
|