研究概要 |
平成15年より平成18年まで,無歯顎患者を対象とした無作為割付臨床試験を実施し,軟質裏装材使用義歯の臨床効果について検討を行った.平成16年度より被験者のサンプリングを開始し,平成18年度において予定したサンプルサイズ74名の被験者数に達したためサンプリングを終了した. 以下研究結果について述べる.軟性裏装材使用下顎総義歯装着者と通法下顎総義歯装着者の褥創数と痛みを初回アポイント時に観察したところ,通法義歯使用者に比べ軟性義歯使用者の褥創数の方が有意に少なく,痛みの訴えも少なかった,これらは,初回アポイントまでの日数にも影響を及ぼしたと考えられ,軟性義歯装着者の方が,調整に訪れる日までの期間が通法義歯装着者より長かった.調整期間は総義歯患者に対し苦痛を与え,術者はこの時期の患者の扱いに最も苦労する.従って,この期間を短期間にそして効果的に乗り切ることは臨床上意義深いことである.本研究において,軟性裏装材を下顎義歯に応用することで,この期間の苦痛を和らげる事が可能であることが明らかとなった. 装着完了後の咀嚼能率と顎運動を通法群と軟性群にて比較したところ,両者間に有意な差は認められなかった.シリコーン系軟性裏装材を使用した場合,両者間に差が認められることを,先行研究にて著者らは報告しているが,シリコーン系裏装材とアクリル系では咀嚼値に関し異なる傾向を示した.シリコーン系裏装材を使用した場合,咬合相時間の延長が認められた.
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