研究概要 |
この研究の目的は,咬合状態や咀嚼がインスリン分泌に及ぼす影響を調べることにより,顎口腔機能と,糖尿病をはじめとする生活習慣病との関連を検討することである. まず,栄養摂取時のインスリン分泌様相の咀嚼の有無による違いを検討するため,ガム咀嚼後にブドウ糖液を摂取させた群と,ガム咀嚼を行わずにブドウ糖液を摂取させた群とでブドウ糖液摂取後の血中C-peptide値の変化を観察した. その結果,血中C-peptide値,血糖値ともにガム咀嚼群はコントロール群に比べて早期に上昇しかつ早期に低下することが明らかとなったた. 次いで,肥満を伴う糖尿病モデルラット(OLETFラット)を使い日常的な咀嚼の様態が耐糖能に及ぼす影響を調査した.ラットを,離乳時より粉食を継続して与える群と,ペレット食を与える群に分けて飼育し,OGTTによる耐糖能の測定を行った. その結果,32週齢時以降40週齢時にかけて粉食群に耐糖能の低下が認められ,生育時の食餌の性状が耐糖能に影響を及ぼす可能性のあることが示唆された. その後,Wister系ラットにおいて,OGTT時の血糖値による耐糖能の変化とともに,インスリン値を測定し,耐糖能の違いを惹起する原因の探求を行った. その結果,血糖値では45週齢時から粉食群に耐糖能の低下が認められた.また,インスリン値は,粉食群がペレット食群に比べてより高い値を示し,両群で有意な差がみられた.このように,咀嚼や,摂取させる飼料の性状はインスリン分泌および血糖値に影響を写えることが明らかにされ,生活習慣病発症または予防と,咀嚼や食餌性状とは何らかの関連を有すことが明らかとなった.
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