研究概要 |
手術や麻酔などすべての臨床的処置は生体にとってストレスとなる. ストレスはストレッサーに対して,ホメオスターシスを保つため,ゆがめられたホメオスターシスを元に戻そうとする反応である.しかし,過剰な反応は必要以上なホルモンを分泌する.また,糖代謝異常や免疫機能低下など生体に悪影響を及ぼすため,生体反応を最小限に抑え,患者の全身状態を安全に維持することが重要となる.また,ストレスの原因の一つに手術や麻酔操作による痛みがある.現在の臨床では手術時の痛みを除去するために,痛い注射を行い生体にストレスを与えている.そこで痛みを抑制する手段としてレーザー光に着眼し,レーザー光を照射することで,リドカインの経皮吸収の促進とその効果を検討した.無処置の状態で疼痛閾値に差の無い皮膚二箇所に,フェルビナクローションを塗布し,60%リドカインテープを貼付した.次にレーザー光を照射しない皮膚と照射した皮膚の疼痛闇値を比較したところ,レーザー光を照射した皮膚の痛党閥値が上がり,リドカインの経皮吸収がレーザー光照射により促進された.海野らは,精神的ストレスを軽減するために用いる静脈内鎮静法で使用する薬剤をBispectral Index(BIS)により,催眠深度の測定と交感・迷走神経活動を非侵襲的に測定し,心拍変動からプロポフォールおよびミダゾラムによる有意識下鎮静は,プロポフォールは副交感神経優位に,ミダソラムは交感神経優位にすることやストレスのかかる気管内挿管時においては,プロポフォールを単独で用いるより,プロポフォールとミダソラムを併用した方が心拍数や血圧が安定することなどを明らかにした.
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