研究概要 |
本研究では、免疫機能と骨粗鬆症の関係解明と培養細胞実験モデルの確立や骨粗鬆症原因遺伝子解析を明らかにすることを目的とした。 骨代謝マーカーでの検討 8週齢SD系雄性ラットに,実験群にはFK506(1mg/kg)を,対照群には生理食塩水を5週間連日腹腔内投与した。投与開始時,開始後1,3,5週後の血清および尿を経時的に採取し,Ca濃度,骨代謝マーカーとして血中オステオカルシン(BGP),ピリジノリン(PYD)とデオキシピリジノリン(Dpd)の和を測定し骨代謝の指標とした。また,骨吸収促進因子である血中PTH,TNFα,IL-6を測定した。FK506投与によって,血清Ca濃度は両群ともほぼ一定で正常範囲内を維持したが,尿中Ca濃度はFK投与群では有意な上昇が認められた。骨代謝マーカらのうち,血中BGP値はFK投与群において1週目に有意に増加したが以後減少し,対照群と差は認められなくなった。尿中PYDとDpd総和は投与期間中を通してFK投与群では有意な増加を示した。骨吸収促進因子のうち血中PTHは,FK投与群では対照群と比較し3週目以降,有意に増加した。 破骨細胞分化系の確立 7週齢雄性ICRマウスに実験群にはFK506を,対照群には生理食塩水を連日腹腔内投与した。投与1週間後に大腿骨を採取し、M-CSF,s-RANKLの添加により破骨細胞へと分化誘導した。破骨細胞数は、TRAP染色を行い,破骨細胞の吸収活性(pit assay)は象牙質片を入れて培養を行い,破貪食された面積を画像解析により計測することで吸収活性を評価した。FK506投与マウスの方が,破骨細胞の形成と吸収窩は対照群と比較し有意に増加した。 microarrayによる遺伝子発現解析 7週齢雄性ICRマウスに実験群にはFK506を,対照群には生理食塩水を連日腹腔内投与した。投与1週間後に大腿骨を採取し、実験群と対照群における骨髄内遺伝子発現の差異を,mouse development oligo microarrayによる20371個の遺伝子について発現解析を行い,FK506投与によりup regulatedあるいはdown regulatedされた遺伝子を検索し、遺伝子発現解析を行った。マイクロアレイ解析の結果、FK506を一週間連日投与することにより生じた骨髄内への影響について,対照群と比較し2倍以上の発現差が認められたのは、2487個の遺伝子であった。解析結果,免疫と骨に関連の深い遺伝子を認めた。
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