研究概要 |
血管新生阻害剤TNP-470は血管新生阻害と同時に骨吸収抑制作用を有し,骨転移や高Ca血症での有用性が期待できる。TNP-470の血管内皮での標的分子はMetAP-2と報告されているがMetAP-2の生物学的役割は不明である。本研究ではMetAP-2の破骨細胞性骨吸収抑制における役割を明らかにするために以下の検討行い,MetAP-2は破骨細胞の形成・分化を抑制することが示唆された。 1.破骨細胞形成系でのTNP-470の効果とMet-AP2発現に関する検討 マウス脾細胞あるいはRAW264細胞をM-CSF/sRANKLで刺激した破骨細胞形成系でTNP-470は形成を抑制し,MetAP-2発現を促進した。 2.siRNAによるMetAP-2遺伝子発現ノックダウン TNP470はMetAP-2の発現を亢進したが破骨細胞形成に関する役割をsiRNAによる遺伝子発現のノックダウンを行った。TRAP陽性破骨細胞はMetAP-2抑制により成熟化し,破骨細胞への分化に関与する可能性が示唆された。 3.RANKL/RANK系の破骨細胞シグナル伝達系におけるTNP-470の影響 受容体であるRANK/c-mfsのmRNA発現をRT-PCRにて検索したが,TNP-470は影響しなかった。RANKL/RANKのシグナリングに関与するTRAF6,NF-kB,I-kBα,リン酸化Ik-Bα蛋白発現に対してTNP-470は発現の遅延をするが抑制は認めなかった。転写因子NFATc1の発現はTNP-470により著明に促進した。 4.DNAマイクロアレイによるTNP-470の標的候補遺伝子の網羅解析 マウス脾細胞とRAW264.7細胞を(1)vehicle, (2)TNP-470, (3)M-CSF+sRANKL, (4)MCSF+sRANKL+TNP-470の4条件で培養し,2種の細胞株で合計8つのアレイの組み合わせで絞り込みを行った。両細胞で同じ調節を受ける遺伝子として4つが候補遺伝子として選択された。HIF-1,Cas等の遺伝子で他は過去に報告のない遺伝子であった。
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