研究課題
基盤研究(C)
優れた抗酸化剤や香料として広く化粧品や食品添加物として使用されているメトキシフェノール関連化合物は抗炎症作用や口腔前癌病変の発癌予防効果を示すことが知られているが、これらの単量体は自らフェノキシラジカル化し生体為害反応を引き起こすことが報告されている。ゆえにFujisawaらはメトキシフェノール関連二量体化合物を合成し、これらの化合物が単量体の優れた抗炎症作用、抗癌作用、抗酸化作用を温存したままで低細胞障害性と高抗酸化力を示すことを発見した。この結果はこれらの二量体化合物が炎症性サイトカイン発現の調節作用を有する可能性を示唆した。そこで私共はメトキシフェノール関連化合物がRAW264.7細胞の炎症性サイトカイン発現と炎症や発癌、サイトカイン発現に主要な役割を演じるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)発現の調節作用を有するか否か検討した。メトキシフェノール関連化合物であるEugenol、isoeugenol、ferulic acid、isoferulic acid、methoxymethylphenol(MMP)、butylhydroxyanisole(BHA)、o-Vanilinは東京化成社製、hesperetin、hesperidinはSigma社製、メトキシフェノール二量体(bis-eugenol、dehydrodiisoeugenol、bis-ferulic acid、bis-MMP、bis-BHAは各単量体から合成)を使用した。LPSはEscherichia coli O-111B4由来(LBL社)を使用した。歯周病原綿菌であるPorphyromonas gingivalis線毛はYoshimuraらの方法に準じて精製した。遺伝子発現はNorthern blot法で検討した。NF-κB活性化はEMSA法とWestern blot法で検討した。メトキシフェノール関連化合物二量体bis-eugenol、dehydrodiisoeugenol bis-ferulic acid、bis-MMPはLPS刺激の炎症性サイトカイン発現やCOX-2発現を抑制した。しかしそれらの単量体では抑制されなかった。この結果は二量体化メトキシフェノール関連化合物が抗炎症剤、前癌病変の予防剤として有用である可能性を示唆した。関連化合物ではあるが単量体のhesperetin、hesperidin、O-vanilin、isoferulic acidでも高濃度ではあるが細胞障害性なしに抑制作用が認められた。構造-COX-2抑制活性の関係を検討したところ中等度のフェノール性OH基解離エンタルピー(BDE)を持つ化合物にこの抑制作用が著明に認められることが判明した。それゆえ、慢性歯周炎疾患モデルを想定してP.gingivalis線毛刺激の炎症性サイトカイン発現が同等のBDEを持つBHAや二量体bis-BHAで調節されるか否か検討した。その結果、線毛刺激炎症性サイトカイン発現はBHAでなくbis-BHAにより著明に抑制された。この結果はメトキシフェノール関連化合物の二量体が非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に似た抗炎症作用を有する可能性を示唆した。今年度の研究結果は、メトキシフェノール関連化合物二量体の炎症性サイトカイン抑制作用がその構造特異性に基づく所謂フェノール作用に起因している可能性を示唆したが、その詳細なメカニズムの解明には構造-遺伝子転写制御に関するさらなる検討が必要と考える。
すべて 2005 2003 その他
すべて 雑誌論文 (21件) 文献書誌 (1件)
Archives of Biochemistory and Biophysics 434巻・2号
ページ: 326-332
Archivum Immunologiae et Therapiae Experimentalis 53巻・1号
ページ: 28-38
Anticancer Research 25巻・5号
ページ: 3367-3374
In vivo 19巻・5号
ページ: 849-854
In vivo 19巻・6号
ページ: 1039-1043
Archiv.Biochem.Biophys. 434
Arch.Immunol.Ther.Exp. 53
Anticancer Res. 25
ページ: 3263-3269
In vivo. 19
120005520717
ページ: 4029-4036
Anticancer Research 25巻
In vivo 19巻
ページ: 849-853
Archives of Biochemistry and Biophysics 434巻・2号
Archivum of Immunologiae et Therapiae Experimentalis 53巻・1号
Biochemical Pharmacology 66巻・6号
ページ: 1061-1066
Biochem.Pharmacol. 66