研究概要 |
5週齢のSD系雄性ラットをペントバルビタール麻酔下,左側下顎骨をラウンドバーで切削し,下歯槽神経を露出させ,これを切断し神経障害モデルとした。コントロール群は下歯槽神経が露出しない程度に下顎骨を切削するに止めた。 下歯槽神経切断後1日,3日,1週間後に4%パラホルムアルデヒドで灌流固定を行い患側の三叉神経節を取りだした。厚さ5μmの凍結切片を作成し,各種抗体で免疫組織化学法を行った。用いた抗体はATF3,GFAP,ED-1の3種。また,神経切断1および2週間後に患側のwhisker padにvon Frey filamentにより15gおよび60gの機械的刺激を90秒間与え,さらに30秒後に灌流固定を行い三叉神経節のphosphorylated ERKおよびTNFαなどのサイトカインレセプター下流で働くNFk-Bについて検討した。 下歯槽神経切断により三叉神経節でGFAPの陽性構造物の増加が確認され,satellite cellが活性化されたと考えられる。また,ED-1陽性細胞が認められるようになった。これらは活性化されたマクロファージあるいはマイクログリアであると考えられるが,ATF3陽性ニューロンの周囲のみならず,三叉神経節の下顎神経領域以外でも観察された。このED-1陽性細胞の活性化にTNFαなどのサイトカインの関与を予測されたがNFκ-Bは下歯槽神経切断により傷害を受けたと思われるニューロンでわずかに検出されたのみで,三叉神経第1枝,2枝領域では認められなかった。神経傷害後,15gまた60gの刺激によってもERKのリン酸化は観察されなかった。また,いずれのtime pointsでもERKのリン酸化は検出されなかった。 三叉神経第3枝の傷害によりグリアなどを介して第1,2枝領域の三叉神経節ニューロンが活性化されることを予測したが,ERKのリン酸化およびNF-κBの発現においては確認できなかった。
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