研究概要 |
本研究ではヒト好中球の走化能に関わる遺伝子診断を行うことにより歯周病罹患に対するリスクの一つを判定することである。 結果 1.好中球の走化能 前思春期性歯周炎(prepubertal periodontitis, PP)に罹患した小児の好中球走化能は,対照に対して6.7〜83.7%程度で,著しく低下していたものがあった。また,同家族で好中球の走化性が低下しているのは4名(gingivitis 3名,adult periodontitis, AP 1名)で,その走化能は対照に対して17.5%〜84.2%であった。さらに,fMLP刺激によっても走化能が上昇しなかったのは9名(gingivitis 3名;PP 6名)であった。一方,fMLP刺激によって走化能が上昇したが,対照に比べて低い走化能であったのは3名(PP 1名;AP 1名)であった。 家族別にみると,両親のどちらかに走化能が低下している場合,子供にも走化能の低下が認められた。 2.fMLP receptor mRNAは,健康歯肉群に比べてfMLP非刺激およびfMLP刺激共に30倍以上合成されていたが,走化能と対比すると正常なfMLP receptor mRNAが合成されていない可能性が示唆された。また,fMLP刺激ではmRNAの産生が抑制されるものも認められた。健康歯肉群でも同様な結果が得られたが,負のフィードバックが働いていることが強く示唆された。 3.fMLP receptor変異解析 fMLP receptorの変異解析はダイレクトシークエンス法を用いて行った。一塩基多型は好中球走化能の低下していた患者の遺伝子301番目の塩基がGからCに変異していており,アミノ酸はValからLeuへの変異であった。しかし,ヘテロ変異でホモ変異したものは見られなかった。好中球走化能の低下していない患者に変異は認められなかった。
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