研究課題
基盤研究(C)
本研究は幼若永久歯の骨性癒着が歯の萌出に及ぼす影響を明らかにする目的で、幼犬10頭の上顎右側第一・第二切歯を用い再植実験を行った。実験歯を脱離し、歯根膜を全周剥離後、2%リン酸酸性フッ化ナトリウム溶液中に20分間浸漬した。抜髄後、水酸化カルシウムを根管貼薬し再植することで、幼若な個体に実験的に骨性癒着を発症させ、健全な反対側と比較した。臨床的評価では、実験歯に低位化と咬耗を認め、これは第一切歯に比べ歯根未完成である第二切歯でより顕著であった。骨性癒着の判定は、規格化エックス線写真では再植6週以降で可能であった。実験歯の動揺度は、再植6週以降で対照歯に比べ低くなり、打診により金属音を確認した。病理組織学的評価では、全ての実験歯で骨性癒着の発症を確認し、対照歯にみられる歯根膜コラーゲン線維の走行は欠如していた。骨性癒着には歯根象牙質を吸収し急速に進行するタイプと、癒着を認めるが急速な歯根吸収を伴わないタイプが確認された。実験歯の歯槽骨頂部の高さは対照歯に比べ低く、実験歯唇側歯頚部付近の歯槽骨は、対照側に比べ陥凹していた。実験歯の槽間中隔部は、骨性癒着の進行によりその幅は広がり、中央部骨梁はすう疎化していた。実験側では対照側に比べ骨形成を示す蛍光抽出領域は広く、相対蛍光強度も高くなっていた。この変化は再植初期3週例で顕著に認められ、相対蛍光強度は歯頸側寄りで高い値を示しが、再植12週には対照側に近づく傾向が認められた。実験歯の骨性癒着は正中口蓋縫合をはさみ、反対側までその影響が及ぶことは少なかった。以上より、発育期に生じる骨性癒着は、歯根膜の欠如により歯の萌出を阻害し、唇側ならびに垂直方向への顎の発育を抑制することが示唆された。
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