研究概要 |
樹状細胞などに発現するCD1分子によって提示された糖脂質抗原を認識して活性化するT細胞集団が存在する。歯周病関連細菌感染に対する防御においても,これらと同じく菌由来の糖脂質抗原免疫応答機序が働くことが想定されるが,1)歯周病原細菌のいかなる糖脂質が抗原となり得るか,2)それら抗原はどのCD1分子の拘束を受け,どのようなT細胞集団を活性化させるか,また3)それらT細胞集団はどのような応答性の特徴を有するかなどについて,何もわかっていない。我々は,P.gingivalis, A.actinomycetemcomitans, T.denticolaの3菌種の全菌体破砕物から比較的極性の高い糖脂質を抽出することに成功した。各細菌由来の糖脂質抗原(10μg/ml)の混合物存在下において樹状細胞と共培養することにより,効果的に糖脂質抗原を提示させた。その後,健常者由来末梢血T細胞とそれらT細胞のドナーとHLA-DRタイプの一致のないドナーに由来する成熟樹状細胞とを共培養することによって,糖脂質抗原を認識するT細胞株を樹立することを試みた。その結果,3名の被験者末梢血単核球から抗原特異性を有するT細胞株を16株樹立することが出来た。次にこれらT細胞応答性を誘導する糖脂質抗原が何であるかを特定するために,それぞれの抽出物を高速逆相液体クロマトグラフィーを用いて数種の画分に分画し,それぞれの画分が誘導するT細胞応答性を評価することを行なった。その結果,1)T細胞株の増殖応答を誘導した画分は様々であること,2)増殖誘導されたT細胞集団の多くがCD4陽性ヘルパーT細胞であることがそれぞれ分かった。以上のことから,歯周病細菌に由来しT細胞応答を誘導する糖脂質抗原は複数存在すること,また増殖応答を示すT細胞はCD4陽性ヘルパーT細胞集団であることが示唆された。
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