研究概要 |
喫煙が歯周組織破壊における最大のリスクファクターであることは異論のないところである。そのメカニズムは,生態防御機構の不均衡が深くかかわっているとされているもののその見解は様々である。我々は,喫煙による,好中球に対する一連の殺菌系の検討を行い,活性酸素産生能と脱顕粒の関連について考察を加え,以下のごとく雑誌,学術誌にその研究成果を発表した。 1,歯周組織における喫煙の影響と禁煙サポートの展開について,歯界展望,特別号20th JADS,273,2005. 2,喫煙が好中球の機能に及ぼす影響-脱顆粒と活性酸素産性能についての一考察-,日本歯科保存学会雑誌,48巻,6号,891-901,2005. 概要は,タバコの有害物質であるニコチンにより,好中球の機能亢進が,さらには,ニコチンの代謝産物であるコチニンにより機能低下が認められ,この連鎖により歯周組織破壊が生じるものと推察された。特に,半減期が20〜40時間であるコチニンは,抗原に対する機能低下を長時間に渡り及ぼす可能性があり,重要な歯周組織破壊因子であることが推察された。以上の結果を踏まえ,実際ヒトの口腔内におけるコチニン量と,歯肉溝内における脱顆粒成分,特に好中球エラスターゼ活性と,そのインヒビター,複合体形成量を指標として以下の内容で発表した結果,健康な歯周組織を有する場合唾液中コチニン量と脱顆粒に関する項目に相関性は認められなかったものの傾向が把握でき,被験者数を増やし,また歯周病罹患患者における検討を行っている。 1,唾液中コチニンがGCF中エラスターゼ活性におよぼす影響,日本歯科保存学学会第123回秋季総会,東京,2005,11月.
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