研究概要 |
咬み合わせ異常感覚の発現への咬合状態や社会心理的な因子の関与を調査することを目的とした.被験者は,咬み合わせ異常感患者群13名,コントロール群22名で,オクルーザルレジストレーションストリップスによる咬合接触検査,咬合力測定用感圧フィルムによる咬合力測定,心理的因子として不安と抑うつ程度,外向的・神経症的性格傾向を,日常生活因子として測定習慣,習癖,環境等の寄与因子を質問表を用いて測定した.その結果,フォイル引き抜きテストによる咬合接触点数において,患者群はコントロール群に対し,有意に接触点数が少なかった.咬合力検査では,咬合接触面積,咬合力,咬合接触点において有意差が認められ,患者群はコントロール群に比べ低い値を示した.不安・抑うつ得点,神経症的・外向的性格得点について両群間に有意差は認められなかった.不安・抑うつを診断のためのレベル分けした場合,Kruscal Wallis検定では,不安の判定において群間に差が見られなかったが,抑うつの判定では患者群で,抑うつ傾向が高いことが示された.日常生活寄与因子ではともに,多忙さや精密作業,心配事ありの割合が多かった.患者群,コントロール群を従属変数とする多変量ロジスティック回帰分析より,咬み合わせ異常感患者である確立を低める因子として咬合力が,高める因子として"噛み癖"が抽出された.ロジスティック回帰分析からは,心理的因子は予測因子とはならなかった.本研究結果は,咬み合わせ異常感の発現維持に,咬合因子,心理的因子,日常生活習癖因子が複合して関与していることが明らかとなったと同時に,今後さらに詳細な動的な咬合状態,性格・気質の調査,発症契機と心理状態等を検討する必要性が示唆された.
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