研究概要 |
開発途上国の看護学生の防災意識と行動変容のための災害看護学教育を明らかにし,災害看護の視点から国際協力のあり方を検討することを目的に,2年間にわたってニカラグアで調査を行った。1年目は,看護学校と看護系大学の学生171名,看護職30名から災害看護学に関する質問紙調査の回答を得た。これらの対象に,災害看護学に関する講義を実施し,看護系大学の学生及び看護職には,さらに集団災害医療訓練のためのエマルゴトレーニングシステムを用いて机上シミュレーションを行い,その後に再度質問紙調査を実施して災害意識の変化の有無を検討した。看護学生については,災害に対して何もできない,我慢しなければならない,自然の報復だ,などの受動的回答が減少するとともに,防災教育や普及が看護師の仕事であるという災害による被害の予防を意識した回答が増加していた。2年目は,講義および机上シミュレーションに加えて,地域実習を実施し,その前後に質問紙調査を行った。地域実習については,前年に教育を受けた看護系大学の3年生(15年度の対象)も加えて学生計56名,看護師34名を対象とし,地域実習に合わせて作成した質問紙を用いて調査を行うとともに,グループワークの発表内容についても分析した。その結果,地域実習の導入により,学生および看護師に共通して地域の健康問題や防災上の問題点,地域防災における看護師の役割が具体的に提示されることがわかった。2年間の調査結果から,災害看護学教育として,机上シミュレーションの導入によって,災害意識について変化がみられるとともに,地域実習により具体的な行動がイメージされることが分かり,今後の行動変容の可能性が示唆された。社会基盤が脆弱な開発途上国では,災害の被害を最小限にとどめるために地域防災を志向した災害看護学教育が有効であり,今後の国際看護協力の課題となりうると考えられた。
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