研究概要 |
易感染宿主である高齢者や脳血管障害者を対象に,口腔に備わる局所の生体防御機能を損なわず,かつこれを賦活するような口腔ケアの方法を検討することが本研究の目的であり,以下の内容について検討した。 1.唾液分泌量を促進させるためのマッサージ部位の検討 健常な女子学生を対象に唾液分泌量や唾液湿潤度の変化、自覚感から調査し検討した。口腔乾燥群において大唾液腺部のマッサージが有効であった。 2.唾液採取方法の検討 液性生体防御成分は吸着性が高く採取法による影響を受けやすい。本研究の対象者には,吸引による方法が必要であるため採取方法について検討した。唾液中のS-IgA,トリプシン活性,カリクレイン活性,総タンパク量を測定した。排唾法と吸引法では有意差がなく,吸引法が適切であることが示唆された。 3.健常者の年代および歯肉状態と唾液中の口腔内液性成分との関係 若年者(20歳代)45名,成年者(30〜50歳代)46名,高齢者(60,70歳代)30名を対象に,唾液は吸引法により5分間採取した。S-IgA,トリプシン活性,カリクレイン活性,総タンパク量,human airway trypsin-like protease(HAT)を測定した。唾液分泌量は若年群が他群より有意に多く成年群と高齢者群では有意差はみられなかった。口腔内液性成は,高齢者群が有意に高く,また,S-IgAは,若年群が有意に高かった。歯周疾患の有無との有意差はみられなかった。 4.高齢者の経口摂取者と経腸栄養者の唾液量および口腔内液性成分の比較 施設入所中の高齢者で経口摂取者と経腸栄養者を対象に吸引法により唾液を5分間採取した。唾液量では両群に有意差は見られなかった。液性成分の濃度は,すべての項目において経腸栄養者群のほうが高く約2倍の濃度であった。
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