研究概要 |
本研究の目的は,食道がんのために食道切除術を受け,自宅で生活する患者が直面している,嚥下障害をはじめとする生活上の困難及びそれらへの対処の実態を明らかにすることである。 対象者は,研究参加に同意が得られた外来通院中の30名で,その内訳は男性26名,女性4名であった。年齢は,39歳〜81歳で,平均年齢は66.1歳であった。食道切除術後の再建方法は,胸壁前皮下経路再建術を受けた患者が17名,後縦隔内経路再建術を受けた患者が12名,胸骨後経路再建術を受けた患者が1名であった。インタビュー時における術後経過日数は,2ヶ月〜9年8ヶ月であった。29名の患者から面接に対する録音許可が得られ,総面接時間は1272分,平均面接時間は約40分であった。録音許可の得られなかった1名に関しては,面接内容を筆記するとともに,面接終了後速やかに面接内容を記録した。面接内容を逐語訳し,内容分析の手法を用いて,質的・帰納的分析を行った。 分析の結果,食道がんのために食道切除術を受けた患者が抱える術後の生活上の困難は,【予想をはるかに超えて苦痛と化した摂食行動】【生活圏の狭小化】【ボディ・イメージの変化】【胃液・食物の逆流に伴う苦痛感】【再発・転移の不安】【社会生活継続への懸念】の6の大表題に集約された。 また,食道がんのために食道切除術を受けた患者が抱える術後の生活上の6つの困難に対する対処法は,《生きるために自分流の食べ方を体得する》《時間をかけて変化に慣れる》《命と引き換えに変化を受け入れ行動する》《逆流を防ぐための方策を捜し求める》《定期的に病院を受診しながら用心して生活する》の5つの大表題に集約された。
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