研究概要 |
本研究の目的は,分娩後から産後1カ月さらに産後3カ月までの母乳哺育継続状況と,母乳哺育継続を制限する要因を分析することである。本調査結果は,母乳哺育継続のための支援の根拠を見い出し,「母乳で子どもを育てたい」という母親のニーズに応えることが可能になると考える。さらに,母乳哺育継続のための有効な支援の検討を行うための有益な情報を得ることが可能になる。 結果 1.産後1カ月までの母乳哺育継続を制限していた要因は,以下の3領域22項目が明らかにされた。 1)母乳育児に影響を与える心理,社会的要因:14項目 「はじめての母乳哺育」,「経験からのあきらめ」,「想像上の児と現実の児の違いから生じた不適応」,「児との生活体験不足」,「エネルギーの不足」,「母乳哺育への関心や欲求の欠如」,「適切でない目標指向や価値」,「不適切な意思決定」,「家族あるいは他者の妨害」,「余裕が持てない生活状況」,「家族あるいは家庭における危機的状況」,「乳房トラブル」,「サポートの欠如」,「マタニティーブルー」 2)母乳育児に影響を与える乳房の形態的要因:3項目 「乳頭の形態異常(扁平乳頭と真性陥没乳頭および乳頭の大きさが17mm以上の大きい乳頭)がある」,「乳頭亀裂がある」,「乳腺組織の厚さが21mm以下である」 3)母乳哺育に影響を与える母子の基本的条件要因:5項目 「分娩時出血量が500ml以上である」,「出生体重が2500g未満である」,「前回母乳哺育でなかった」「たばこを吸っている」「退院時母乳哺育でない」 2.産後3カ月までの母乳哺育継続を予測する指標は,退院時母乳哺育であることが示唆された。 展望:これら結果をもとに,母乳哺育継続支援のためのアセスメントツールの開発を行う。
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