研究概要 |
本研究の目的は、がん化学療法患者のリラクセーション技法を行ったことによる精神状態及び免疫機能の変化を明らかにすることである。対象者は、大学附属病院に入院中の消化器系がんで手術後に初回化学療法を受けた20名であり、年齢は40〜80歳であった。測定尺度は、感情プロフィール調査(Profile of Mental States:POMS),がん薬物療法におけるQOL調査票、免疫指標としては、DC1、DC2,Th1、Th2,IL-10,IL-12であった。対象者には、研究目的、方法、途中でも中止できることやプライバシーが保護されることについて口頭と文書で説明した。研究参加への同意が得られた場合、承諾書にサインを依頼した。プレテストとして、PONMS、QOL調査票に記入後、免疫検査のために採血(10ml)した。その後、無作為に実験群(10名)と対照群(10名)に分けた。実験群には、リラクセーション技法(漸進的筋弛緩法)を指導し、CDを使って1日2回練習をするように指導した。対照群には、病院で提供される治療に従うように説明をした。約4週間後に、ポストテストを実施した。結果は、POMSに関しては、対照群の1・2回目と実験群の介入前後との差を比較すると、5つの項目において、有意差は認められなかったものの実験群の方が大きな減少を示した。QOLに関しては、対照群の1・2回目に比べ実験群の介入前後の差の方が大きくプラスへ変化した。免疫指標に関しては、実験群ではDC1は介入後に減少しているにもかかわらず、Th1は増加していた。対照群では2回目の測定時、DC1は増加し、Th1は減少していた。DC1がTh1の誘導サブセットであることを考慮すると、実験群および対照群ともDC1とTh1との増減が一致しておらず、介入による免疫機能細胞への関与は言及できなかった。これらの結果から、免疫指標に関する分析を高める方法を検討し、POMSやQOLとの関連を検討していきたい。
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