研究概要 |
1.目的 認知症高齢者の終末期ケアプログラム開発に資する基礎資料を得るために,終末期の進行過程を追求することを目的とした.本研究は2つの調査計画のもと,2003〜2005年度に実施した. 2.調査1の成果の概略 新潟県内の某特別養護老人ホームに入所中の重度認知症高齢者のうち,認知症の診断が明確で,かつ許諾の得られた5名の入所以降の心身状態の変化をカルテから把握した.その結果,以下の知見を得た. (1)寝たきり状態にある重度認知症高齢者には,発熱に次いで,嚥下障害,食事摂取量の低下,喘鳴,意識レベルの変調などの身体徴候が出現した.また,入所時に歩行可能であった者は,転倒,骨折を契機に寝たきり状態に移行し,前述のような経過をたどった. (2)経口摂取が可能な者と経管栄養受療者の経過を比較したところ,後者には前者に比べて発熱日数は少ないが,自己抜去に起因すると思われる肺炎を複数回,起こしていることがわかった. 3.調査2の成果の概略 千葉県内の某特別養護老人ホームに入所中で,継続して本調査対象となっている27名の予後および体温,食事摂取量,体重等を既存記録から収集した.その結果,以下の知見を得た. (1)2003年8月〜05年8月までに計11名が死亡し,16名が生存していた.両群の性,年齢に差はみられなかった. (2)死亡者のうち,調査開も周辺症状を保持し,身体徴候よりも"活気がない"などの全体的な印象に着目されていた.それに対して寝たきり者では,調査1と類似した経過を示し,中でも死亡前1年間での体重の減少が顕著であった. 以上より,認知症高齢者の終末期の様相にはいくつかの類型があり,その類型を予測しながら看護ケアを組み立てる必要性があると考えられる.
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