研究概要 |
1)長期療養施設で生活する認知症高齢者の睡眠・覚醒リズムと照度の実態調査 認知症高齢者が生活する場の光環境を調整するために,まずは建物の立地の特殊性もふまえた構造的な照度の特性と,認知症高齢者が実際に受けた照度の両面からの総合的なアセスメントが重要である。これをもとに生活の場における光を有効活用するために,「屋内採光を活用するための居場所の選択」「移動能力に応じた居場所づくり」「屋外活動の導入」「光を受けるタイミングの意図的な計画」といったケアの方向性が見出された。 2)認知症高齢者の睡眠・覚醒状態を把握するための方法の検討について 睡眠・覚醒観察法の異なる観察間隔における相違,睡眠・覚醒観察法とアクチグラフにおける睡眠・覚醒状態の把握の相違について分析した。その結果,以下のような示唆が得られた。 (1)認知症高齢者に対して睡眠・覚醒観察法とアクチグラフの2つの測定方法で測定された,「一日の総睡眠時間」「夜間睡眠時間」「夜間睡眠率」「夜間中途覚醒回数」は,すべてに違いがみられた。(2)睡眠・覚醒観察法は,観察間隔よりも短い間隔で中途覚醒が起こると見逃す可能性が高くなり,臥床閉眼状態で身体の動きが止った時や寝息がない時に,睡眠・覚醒の判別を誤りやすい可能性がある。(3)アクチグラフは,筋攣縮のような不随意な動き,掻く,寝具をまさぐる動きは「覚醒」と判別し,覚醒していても著しく身体活動性が低下していると「睡眠」と判別しやすい傾向がある。(4)夜間中途覚醒が少なく,睡眠がまとまっている対象の睡眠・覚醒状態の把握には,睡眠・覚醒観察法およびアクチグラフのどちらでも有効である。睡眠・覚醒観察法は,身体活動性が低下している対象や,身辺への関心や焦燥感が強くアクチグラフ装着の協力を得られない対象の睡眠・覚醒状態の把握に有効である。アクチグラフは,夜間中途覚醒が多く睡眠が断片化している対象の睡眠・覚醒状態の把握に有効である。
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