研究概要 |
1.観測の概要 大洲市にある約10.7haの山林地流域のほぼ中央地点,北西斜面に設営された微気象観測タワーで,以下の観測を実施した. (1)渦相関法とボーエン比熱収支法によるフラックス観測:高度35m地点に3次元超音波風速計と水蒸気・二酸化炭素濃度変動計を設置し,渦相関法による顕熱・潜熱・CO_2フラックスの測定を行った.また,高度14,19,24,29,34m地点に通風乾湿計を設置して気温・湿度分布を測定し,群落上部2高度のデータを用いてボーエン比熱収支法で顕熱・潜熱フラックスを測定した. (2)個葉蒸散・光合成:年間10回程度,スギの個葉蒸散・光合成速度を測定した. (3)土壌呼吸:土壌呼吸測定システムを用いて(3)と同日に測定した. (4)流域水収支:流域末端の集水地点設置で流量を,その近傍の開けた地点で降水量を測定した. 2.結果の概要 蒸発散量とCO_2フラックスを一年間測定した結果,両者とも1月と12月に極小,5-9月に極大となる年変化を示した.両フラックスと気象条件,土壌水分,季節との相関を調べた結果,第一に日射量,第二に気温との正相関が高かった.気温条件が両フラックスに及ぼす影響を検定した結果,両者とも22℃を境界として有意差が検出された.この結論は,昨年度の検討結果と一致する,ただし個葉の蒸散・光合成測定結果からは,光環境に対する蒸散・光合成の変化がとくに冬季に低下することが確認できた.また,2005年の年蒸発散量は1000mm,CO_2吸収量は27.9t/haであった. 観測対象地においてLAI=4.93であった.個葉の気孔応答モデル・光合成モデルを構築し,群落内部の多層放射環境モデルに組み込み,LAIの増減に伴う森林群落の蒸発散量と光合成速度の変化をシミュレーションした.その結果,LAI=4前後で水利用効率が最大になると推定された.
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