研究概要 |
この調査研究は,物理・応用物理関連学科の学部出身者の業種・職種と,物理教育の何がそのキャリアに活かされているかについて卒業生に対するアンケート調査を行い,物理教育の効果の評価と教育改革への指針を提供することをめざした.平成15年度の予備調査と16年度の本調査では,全国の39大学45学科の参加・協力を得て,それぞれの学科を平成11年3月(学部卒業後5年),及び平成元年3月(同15年)をはさんで前後1年以内,に卒業した出身者に対して郵送によるアンケート調査を行い,あわせて777名から回答を得た。回答者の性別構成比は,男性80.8%,女性15.3%,無回答3.9%であった。 回答者の70〜80%が,製造業や情報通信業を中心として産業界その他の多様な分野に在籍している。この分布は,国・公・私立などの大学カテゴリーや最終学歴などにあまり依存しない共通傾向で,物理・応用物理関連学科出身者の大多数が産業界に展開していることを裏付けた。 「学部時代に学んで有意義だったと感じている物理関係学部科目は何か(複数選択可)」という設問への回答比率は,「卒業研究」(51.5%)「実験」(46.6%)が顕著に高く,講義科目は40%以下と小さい。この結果は,「卒業研究」の有効性とともに,講義科目も含めた学部トータルとしての物理教育に改善の余地が少なくないことを示している。 「物理を学んで役に立っている点(複数回答可)」についての回答比率で注目されるのは,「本質的要素を抽出しモデル化出来る」(49.7%),「論理的に考えプレゼンテーションできる」(48.0%),「新技術の原理を理解し利用できる」(46.2%)が高いことで,大学での物理・応用物理の教育が,狭義の「即戦力」教育としてではなく,より基盤的なところで広範な業種と職種に展開する出身者達のキャリアを支えていることがうかがえる。
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