研究概要 |
本研究は,最新の情報通信技術を利用して高等教育における新たな教育環境の確立を目指すものである。特に医療系教育への利用を目指し,WBT(Web Based Training)とビデオストリーミングを組み合わせた教育用情報基盤を構築した。また,この環境で利用する電子教材の開発を行い,実際の教育現場で利用して教育におけるその有用性の評価を行った。 WBTのソフトウェアとしては,カナダのブリティッシュコロンビア大で開発が始まり,現在では世界的に使われている教育コース作成支援ソフトウェアWebCT(Web Course Tools)を利用した。ビデオストリーミングについては九州大学医学部保健学科内と学科外に配信するために2台のビデオストリーミングサーバを用意して,MPEG1形式で保存した動画をコンピュータネットワーク上へ配信できるようにした。WebCTのコースは九州大学医学保健学科の放射線技術科学,検査技術科学,看護学の3つの分野における10を超える教科において作成した。なかでも看護学の分野においてWebCT上に作成した「基礎看護技術学コース」は,30本以上のビデオ教材を自主制作してコースに含め,学生がそれらのビデオ映像をコンピュータ上で随時視聴できるようにした。 作成したこれらのWebCTコースは,講義や演習で利用し,学生へのアンケートなどを通して教育的効果の評価を行った。前述のビデオを繰り返し視聴しながら,コンピュータ上でレポートを作成する「基礎看護技術学コース」は,学生の能動的・主体的学習に対する動機づけを与え,学生による評価も高いものであった。また,「解剖学実習コース」では,顕微鏡画像を見ながらのオンライン試験を実施したが,テスト結果の学生への迅速なフィードバックなどが学生に好評であった。以上のように,医療系教育へのWBTの利用は,学生から高い評価が得られるとともに,学生の学習意欲を向上させることが示された。
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