研究概要 |
種々の材料の高性能化・高機能化にとって,異種材料とのブレンドは広く用いられる必須の技術となってきている.しかしブレンド界面でのダイナミクスは,材料が発現する機能と密接な関係にあるにもかかわらずよく解っていない.特に分子量の大きな高分子の場合には,からみあいという特有の問題があるために,従来の理論的・実験的枠組みでは解析しきれない問題が多数存在する. 本研究は,からみあいのある高分子系をきわめて高速に計算できるまったく新しい手法,Primitive chain Network(PCN)モデルのブレンド系への拡張に関する基礎理論の検討およびシミュレーターの基となる計算スキームの研究を行った.支配方程式については,ブレンド系の自由エネルギーから導出される化学ポテンシャル揚を考慮した拡張を行った.その結果定性的には実験を再現する結果を得ることができることを確認した.モデルパラメーターについては,からみあい点間分子量が,広く用いられているFloryの表式にたいして,1/2の係数をかけたものになっていることがわかった.これはGothらの,結合点にゆらぎがあるゴムに対する理論と同じ結果になっているが,本研究で対象としている,ゆらぎがあるからみあい点に対する値はこれまでわかっておらず,重要な発見といえる. その他,1)平衡状態における相図の検証,2)ブレンド物のレオロジーの検証,3)からみあい点間分子量の検討,4)自由エネルギー項がダイナミクスと平衡状態に及ぼす影響を詳細に検討,5)ブロック共重合体への拡張理論の検討,6)巨大分子への自己多段計算法の開発,7)ミクロスケール計算へのマッピングの検討,を行った.
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