研究概要 |
二重指数関数型変換は定積分を効率よく計算することを目的として高橋秀俊と研究代表者森正武の共同研究によって1974年に提案されたもので,現在は科学技術のさまざまな分野で使われるようになっている.それに対して,本研究の目的は,不定積分に対して二重指数関数型変換を適用してそれを数値計算する新しい公式を導き,その結果を積分方程式の数値解などできるだけ広範囲の数値計算の技法に応用することにある.平成15年度および16年度には,不定積分に二重指数関数型変換を適用し,基本的な数値積分公式を導くことに成功した.この成果は2編の学術論文などに発表した.また,この方法を2次元累次積分の計算に応用して新しい公式を導き,これも2編の学術論文に発表した.さらに,この公式を利用して,Volterra型積分方程式に対する効率の高い数値解法を導いた.一般に常微分方程式は積分することにより同値なVolterra積分方程式に変換できるので,この考えに基づいて初期値問題の新しい解法を導出した.一方,境界値問題に対しても4階常微分方程式の場合にこの方法を適用して,やはり効率の高い数値解法を得た.平成16年9月に京都大学数理解析研究所で国際共同研究集会「Thirty Years of the Double Exponential Transforms」が開催され,二重指数関数型変換に関係するそれまでの成果を広める良い機会となった.平成17年度には,これまでの成果をもとに,連立積分方程式および非線形方程式の場合にこれらの方法を拡張することに成功した.以上の成果は5編の論文にまとめて国際誌に発表した.また,これらの方法についてはいずれも実行可能なFortranプログラムを作成し,そのソースプログラムは,本研究の成果の詳細とともに研究成果報告書に記載し,関心をもつ研究者が利用できるようにした.
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