研究概要 |
造船市場において過度の価格競争を抑制するために,新造船発注の選択権(新造船オプション)を取引する市場制度について,国際研究者交流を通して企画調査を行なった. 1.新造船オプション市場の概念化 特定の造船所で,特定の船舶を,特定の納期で建造することを,定められた期間中に発注できる権利"としての新造船オプションについて,1)オプションの保有を新造船発注の条件とする,2)オプションを集中市場でオープンに取引する,という市場制度を提案した.ただし,船価は権利行使時までの当事者間の交渉によって決まるものとする.オプションの取得には証拠金が必要であるものの,権利行使によって証拠金は船価の一部に充当されるものとする.価格競争力のある造船所が発行する新造船オプションに対して,オプション市場で競争入札を導入することでプレミアムを付加し,船価の下支えをはかる. 2.国際研究者交流 研究代表者は,ソウル大学とプサン大学(韓国),ニューカッスル大学とJapan Ship Centre(英国),エラスムス大学(オランダ)とを訪問,海外から共同研究者2名を招聘,新造船オプション市場について情報収集と意見交換を行なった. 2003年10月,プサン大学にて,新造船オプション市場のセミナーを開催し,韓国の専門家(造船・海運・先物取引)と交流し討論を行なった. 2003年12月,ソウル大学で開催された国際ワークショップにて,新造船オプション市場の招待講演を行ない,韓国の造船専門家および米国の海軍省事務官僚と交流し討論を行なった. 3.企画調査結果 本研究で提案した新造船オプションは,原資産の価格を指定せず,オプション取得に証拠金の制度を導入するという2点で,極めて特徴的なデリバティブである.将来予見される造船市場での過当競争を抑止する効果,造船分野での国際協調を促進する効果が期待できることから,新造船オプション市場の制度設計に関する研究をさらに推進していく意義・必要性が認められた.
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