研究概要 |
本研究は,刺激応答型ポリロタキサンが高密度に配向した液晶状態を形成する要因を明らかにし,ポリロタキサンの配向性が保持された架橋ゲルを調製することによって,外部刺激に応答したゲル変形が一次元に規定される機能の実現を目指している。本年度は、1)ポリエチレングリコール(PEG)とポリエチレンイミン(PEI)とのブロック共重合体に包接したシクロデキストリン(CD)のpHに応答した選択的脱離挙動解析、および、PEIとCDとの包接に伴うゲル化・結晶化(配向化)の調製条件、とについて推進した。 PEIとPEGのブロック共重合体(PEI-block-PEG-block-PEI)をα-シクロデキストリン(α-CD)からなる包接錯体の懸濁液のpHを種々に変化させてみたところ、PEIのpKa以下になるとNMRチャートにおけるα-CD由来のピークが減少し、その減少は、PEGセグメント上に化学量論的に貫通するCD数と一致する割合のところで見られなくなった。このことは、PEIセグメント上の二級アミンがプロトン化することによってPEI鎖上に貫通していたCD分子のみが脱離したことを示しており、pHに応答してCD分子がセグメント選択的に移動することを示唆していた。 また、線状PEIのpKa以下のpHにてα-もしくはγ-CDと混合するとヒドロゲルとなるが、このゲルを含む溶液の温度上昇・下降を繰り返すと、結晶状の白色沈殿となることを発見した。X線解析の結果から、カラム上にCDが配向した結晶構造であることが判明し、pHに応答したCD分子の移動に加えて、配向化した2次元構造を付与することができた。
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