研究概要 |
成人患者4名において呼吸音の音響学的に解析を行った。そのうち2名において呼吸理学療法(呼理法)施行前・中・後の呼吸音および呼吸手技をデジタルビデオカメラに記録して、記録された呼吸音を音響学的に解析した。また、呼理法中には、呼吸管理モニターコズモプラス8100(ノバメトリックス・メディカル・システム社製)を用いて呼吸状態を測定した。残りの2名は、呼理法前・後の呼吸音をミニディスクレコーダーに録音して音響学的に解析した。 呼吸音は聴診器のチェストピースとピン型小型マイクロフォンを連結した聴取装置をデジタルビデオカメラ(Sony社製DCR-PC120)に接続して、理学療法士が行っている呼理法と同時に記録した。音響解析は、音響解析ソフトSound Scope(GW Instruments社製)を用いて、呼吸音をサウンドスペクトルグラムに変換して行った。デジタルビデオテープに記録した呼理法手技画像とサウンドスペクトルグラムに変換した呼吸音を比較検討した。さらに、呼理法中の分時換気量、気道内圧、VCO_2,ETCO_2,等の呼吸状態も測定した。 結果は、呼吸音は呼理法中だけでなく呼理法後も呼理法前より増強していた。また、呼理法中の呼吸音の変化を記録することができ、呼理法手技により呼吸音が増強している場合や手技と呼吸が合わずに呼吸音の増加が顕著でない場合が見られた。呼理法の手技によっても、呼吸音の増強に差があることがわかった。呼理法中の呼吸状態の測走からはVCO_2の上昇を認めた。その他の分時換気量、気道内圧、ETCO_2等には大きな変化は認められなかった。呼理法中のVCO_2の上昇は呼理法手技によるものではなく、呼理法中に行われる体位変換の影響と思われた。 これまでに、呼理法前・後のラ音に着目して排痰訓練評価に呼吸音の音響解析が有効であったと報告してきた。今回の結果からは、排痰訓練に限らず呼理法同一手技でも患者の呼吸に同期して呼理法が行う必要がある。また、呼理法の手技についても患者の状態に合わせて選択する必要がある。この2項目が新たに示唆することができた。また、デジタルビデオカメラとミニディスクレコーダーを用いて呼吸音を記録したが、呼理法手技や呼吸との同期状況を比較できる点で、デジタルビデオカメラによる記録が優れていた。
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