研究概要 |
国や自治体が空間データを公開する際には個人の住所収入職業などといった情報を,町丁目,市区町村などの様々な空間単位で集計することで個人のプライバシーを保護している.一方データ利用者としての研究者から見ると,データは詳細であればあるほど有用であり,個人の詳細な情報を利用することが望ましい.しかしながらでは本当に常に個票データが必要なのか町丁目のような空間単位で集計されたデータでは何が分からないのかといった問いに対しては実は明確な答えは存在しない.データを集計することでどのような情報が欠落し,研究成果がどの程度不十分になるのか,ということは決して明らかではない. そこで本研究ではこのようなデータ流通の現状に一石を投ずるために空間データに求められる詳細さについて,空間分析の立場から検討を行っている.即ち空間分析の立場から考えた場合どの程度まで詳細な空間データが必要なのかを分析結果の信頼性という観点からの実証的研究を進めている.特にここでは空間データの独自性を鑑み位置情報の詳細さに焦点を当てる.つまり個人を空間上で特定するために用いられる位置情報についてデータを集計することによって位置情報の誤差がどの程度現れるのかそのデータを空間分析に利用すると分析結果にどのような影響がもたらされるのかさらには正しい分析を行うにはどの程度の詳細さが求められるのかを検討する. 具体的には,バッファリング,ボロノイダイアグラムなどの空間操作において,空間集計の有無による結果の変動を統計的・実証的双方の視点から定量的評価を行っている.
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