研究概要 |
平成15年度に九州大学農学部附属農場において,乳牛糞尿主体の好熱細菌製の堆肥を作成した.その製造過程における発酵温度は通常堆肥製造時より高く約90℃と確認され,それによって有機質の分解程度が高く砂状の良質堆肥を得た.このような良質堆肥をヒメコウライシバに施したところ,シバの地上部生育は化学肥料区より緩慢であったが,根の生育がよく排水による肥料成分の漏出は化学肥料に比較して極めて少なかった(日高ら,2004). 平成16年度では,この堆肥の有効性をさらに確かめるために,圃場およびポット栽培のダイズに施与したところ,ダイズの開花期までの成長量はどの堆肥区においても化学肥料区と差はなく,子実収量は10倍堆肥(化学肥料に含まれる窒素の10倍相当量)区で化学肥料区よりは若干多かった.一方,排水中の養分偏出を測定したところ,排水中の窒素,燐酸および総塩分量は10倍堆肥区でも化学肥料区よりは少なく,ヒメコウライシバに施与した場合の結果と一致した(江頭ら,2004). 以上のことから,好熱細菌製堆肥は緑地および作物栽培に使用した場合,肥料としての役割を果たすのみでなく,地下水汚染の原因となる栄養分漏出を抑えることもでき,環境保全上大変有効であることがわかった.今後の利用普及に当たっては,肥効性の向上や,病原菌および雑草種子混入の有無を確認する必要がある.
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