研究概要 |
昨年度の研究成果をもとに以下の研究を引き続き行った. まず,合理的期待形成仮説のもとでの経済モデルの動学的振る舞いと,他の適応的期待形成仮説のもとでの経済モデルの動学的振る舞いをの違いを検討し,それらの異なった期待形成仮説のもとでの教育政策への影響についての検討を行った.その中で,カオスが発生している場合の比較の方法をFrobenius-Perron作用素を利用した不変測度に関する諸結果を用いての開発を試みた.また,同一の期待形成過程を有する経済主体の集団に異質な期待形成過程を有する経済主体の集団が僅かに混入した場合に,動学的挙動がどのような定性的変化を蒙るかを調べると同時に,教育政策にどのような変更を加えるべきか,あるいは,既存の教育政策が異質性の混入に対しどれだけ頑健であるかを検討した.動学モデルを構築した後は,その分析の際に,非線形力学系理論を援用してモデルのカオス的な動学的振る舞いを特徴付けることに重点を置いた.解析的には観測可能な複雑性を導くホモクリニック分岐やヘテロクリニック分岐の発生条件の導出,数値解析的には,パラメータ空間での分岐曲線の追跡プログラムと安定多様体/不安定多様体の精度保証付き計算プログラムの開発に主眼を置いた.さらに,カオスや複数アトラクターなど動学的な複雑性が存在する場合の教育政策の検討を行った.
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