研究概要 |
この研究の目的は,戦略的意思決定において,トップとミドルの「因果関連についての見方」という認知に差があるかどうかを,マッピングという手法を用いて実証研究することである。16年度は,先行研究のサーベイを行い,文章中の概念間の関連について客観的にコード化する手法としてHuff(1990)に示されたルールが有効であることがわかった。それをもとに,以下のようにコード化とその結果の分析を行った。 1.分析対象の社内文書のサンプリングとデータのデジタル化:調査対象企業A社の社内文書から,戦略的意思決定に関連するトップとミドルの文書をランダムにサンプリングした。これらのデータをスキャナー,OCRによってデジタル化した。 2.コード化のルール作成:本研究では,Huff(1990)のコードをベースにして,プラスの因果関連とマイナスの因果関連について,トップとミドルそれぞれの社内文書から抽出することにした。プラスおよびマイナスに因果を関連づけられた概念については,環境,戦略,業績,さらにそれらのサブ・カテゴリーにコード化した。 3.コード化:大学院生2名に対し,因果マップのコード化のしかたについてレクチャーを行った。サンプリングした分析対象の社内文書を大学院生によりコード化した。コード化にあたって,基本的に前述したHuffのコード化のルールを使用したが,他にも有望なコード化の方法がないかどうか探索しながら作業をしてもらった。 4.コード化の結果の分析:大学院生によりコード化されたトップとミドルの因果マップには,明らかな差が見られた。この分析結果は,関連する学会で報告し,論文としてまとめる予定である。
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