研究概要 |
本研究では,1)ヒトで好奇心との関連が報告されているドーパミンD4受容体遺伝子多型領域の鳥類での解析,2)D4拮抗薬投与による好奇心の低下の検討、により行動特性の遺伝的側面からの解明を目指した。鳥類ではエキソン1領域にアミノ酸のプロリンをコードするCCNの反復配列が存在し、種間、種内で反復数に差があることを見いだした。個体の行動データがあるカササギ、カケス、ハトで遺伝子型を調べた。プロリン反復領域をPCR増幅して、ABI3100シーケンサー(アプライドバイオシステムズ)を用いて、BigDye V3.1キット(アプライドバイオシステムズ)によるdye terminator法で塩基配列を解析した。その結果、カラス、カササギ、カケス、オウム、ハトはそれぞれ3,3,3,3回反復遺伝子を持っており、種内多型は見いだされなかった。 好奇心の強い種としてセキセイインコを用い、新奇刺激に対する接近行動を好奇心の指標として薬理実験を行った。D4拮抗薬としてはL-745,870を用い、0.1mg/Kgから0.2mg/Kgを筋肉内投与した。その結果、拮抗薬投与により、有意な接近行動低下が見られた。なお、一般活動性には薬物投与の効果は見られなかった。このことから、D4が鳥類においても好奇心に関係することがわかった。しかし、多くの種で種内の遺伝子多型が見られなかったため遺伝子多型と好奇心との関連は十分に解明されなかった。
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