研究概要 |
本研究は、脳科学研究の寄与を学校のカリキュラムづくりとの関係に見て、子どもの心身の発達段階の脳科学的解明と、その成果による学校カリキュラムの妥当性の吟味を、教育学の観点から試みたものである。 筆者はそのために、日本とアメリカの主要な脳科学者の著作の分析と本人へのインタヴュー調査を行い、これまでの日本の小中学校のカリキュラムが、子どもの発達段階との関連で、どの程度妥当であるのかについて検討した。その際、筆者の「子どもの興味の中心の移行による発達段階論Shifting Interest-Center Theory(SICT)」を手がかりとした。 その結果、日本では、脳科学者として、津本忠治(阪大)、澤口俊之(北大)、川島隆太(東北大)、小泉英明(日立基礎研)、多賀隆太郎(東大)、ヘンシュ貴雄(理研)の各氏、外国では、アメリカのH.Gardner(Harvard U.),K.Fischer(Harvard U.),T.Foster(Univ.of Florida),ドイツのVall der Meer(Humboldt U)に直接インタヴューすることができ、とくにGardner教授からはSICT理論について、「興味」というよりも「要求」というべきではないか、との示唆を得た。現在はSICT理論ではなく、needも加えてSINCT理論として、より妥当な理論にすることができた。全体として、脳科学者からは、子どもの発達段階が複線的重層的であること、臨界期・感受期を考慮すべきこと、外部からは人間による直接刺激が重要であることなど、貴重な示唆を得たが、多くはまだ教育学の知見を科学的に解明するレベルにとどまっており、とくに新しい情報はない。しかし、これらにより小学校から高校までのカリキュラムの全体構造を一部修正して明確化できた。
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