研究概要 |
「有限群GがK3曲面にsymplecticに作用できることは,Mathieu群M_<23>の部分群であってその作用域を4個以上の軌道に分割することと同値である」という向井の結果(1988年)を非特異cubic 4-foldに拡張することを主に考えた.これの背景にはcubic 4-fold内の直線全体が4次元holomorphic symplectic manifoldというK3曲面の自然な拡張になっているという事実がある. 非特異cubic 4-foldへのsymplecticな作用はMathieu型と非Mathieu型に大別される.後者は別の取り扱いができ,前者はK3曲面に類似している.今年度の研究においてはMathieu型に作用できる有限群は8次交代群の部分群かMathieu群M_<11>の部分群と同型であろうという予想に達するこどができた.有限単純群に限ればこれは正しい.実際,5,6,7次交代群とChevaley群L_2(7),L_2(11)しかない.2_群に関する強い制約があるので,この予想の証明は時間の問題であると思う. 非特異cubic 4-foldにMathieu的に作用できる有限群で極大なものを分類できる見通しも立った.Mathieu群M_<10>(6次交代群の2次拡大)の作用やFermat型cubic 4-foldの自己同型群で興味深いことも分かった. 自己同型に関する別の研究としてはEnriques曲面に数値的に自明に作用するinvolutionの研究を復活させた.結果は浪川氏との共著論文(1984年)の訂正として発表する予定である.これに関しては立教大学の塩田氏や研究分担者の金銅氏から有益な助言をいただいた.また,京都大学数理解析研究所修士の大橋君が最近これに関係する研究をしている. 有理曲面の(無限)自己同型群についても研究を続けた.これはCastelnuovoの有理性判定定理やEnriques・小平分類といった代数曲面の基礎理論と大いに関係することで,それらに関するノートを作り数理解析研究所の代数幾何学修士セミナーで使ってみた.同様の内容を名古屋大学で3回の集中講義を行った.代数曲面に関する単行本の一部という形での発表を計画している.
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