研究概要 |
50kbp(bp:塩基対)を越える巨大なDNAを分離することのできる分離法が強く望まれている。本研究では,このような巨大なDNAの水溶液内の挙動と,それに対する不均一交流電場の影響について,単一DNAレベルの測定によって明らかにして,それを応用した巨大DNAの新規な分離分析法の確立を目指している。 予め,T4GT7DNA(166kbp,以下T4DNAと略す)を用い,4',6-diamidino-2-phenyl-indole(DAPI)で蛍光ラベル化し,水溶液内のDNAの挙動を,蛍光顕微鏡を用いて確認した。その結果,ダストや溶液調製の手順,容器等の様々な要因によって,単一DNAの観測が妨害されたり,水溶液のDNAの会合や自己凝集などを引き起こしたりすることが明らかになった。様々な検討の結果,T4DNAがランダムコイル状態として水溶液中に溶存し,再現性良く測定できる実験条件を見出した。また,そのブラウン運動や,形態変化などを測定した。 新たに,次のように平面四重極電極を作製した。ガラスにクロミウム,金をこの順で蒸着し(それぞれ5nm,50nmの厚さ),フォトリソグラフ法により,希望の形の電極を残した。電棒の電極間距離は,250μmである。この平面四重極電極に,1kHz〜15MHz,10Vの交流電圧を印加して,その電極内における単一DNAの誘電泳動挙動を測定した。試料には,λDNA(48kbp)またはT4DNAを,DAPIまたはacridine orange(AO)を用いて蛍光ラベル化したものとした。DNAの形態変化を引き起こす種々の界面活性剤(陽イオン性,非イオン性,陰イオン性)を添加したところ,DNAの誘電泳動に対するわずかな影響が認められた。
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