研究概要 |
1,1',3,3'-テトラシクロヘキシルフェロセンを、ジクロロメタン中で塩化アルミニウム存在下で塩化アセチルで処理すると、2つのシクロペンタジエニル基がアセチル化される。このジアセチルフェロセンをLDAで処理しエノラートとし、塩化銅存在下で酸化的に分子内カップリングすると、1,4位にカルボニル基を有する4炭素で架橋されたフェロセンが得られる。このフェロセンは、4つのシクロヘキシル基の置換様式により、メソ体、およびラセミ体の2つのジアステレオマーとして存在するが、これらはカラムクロマトグラフィにより容易に分離可能である。こうして得られたラセミ体のジケトン架橋フェロセンを基質として、不斉ルテニウム触媒を用いてイソプロピルアルコールを水素源とする水素移動還元を行うと、転換率58%において原料のジケトン架橋フェロセンが5.5%の不斉収率で得られた。ここでイソプロピルアルコールとの共溶媒の検討をおこなったところ、ジエチルエーテルを30%添加することにより回収基質の不斉収率は11%になった。この条件下で、原料の転換率を70%まで高めると、回収ジケトン架橋フェロセンの光学純度は23%にまで高まった。こうして得られた光学活性ジケトン架橋フェロセンを水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元した後、分子内脱水することにより、ブタジエン架橋フェロセンが光学活性体として得られてくる。このものは、開環メタセシス重合により光学活性ポリマーへと誘導化可能なモノマーである。
|