研究概要 |
有機薄膜の構造研究には中性子反射の手法が最も適しており,そのためには,膜形成物質を重水素化体とすることが必要となる。しかし,有機化合物の水素/重水素交換反応の汎用性のある方法は,十分ではない。重水を用いて,有機化合物中のC-H結合をC-D結合に変換する方法は,これまでも幾例かは報告されている。超臨界・水熱状態の重水を用いることも考えられ、実際報告もあるが、官能基選択性や基質特異性等の点を系統だって検討した例は少ない。今回我々は、重水による水素-重水素交換に関する技術の開発を行い、その摘要限界及び選択性を明らかにし、高効率重水素化を実現の手がかりをみいだした。鍵となる交換反応は,基質と遷移金属触媒を重水中で、高温・高圧とすることで行った。この条件で,シクロドデカンにパラジウム触媒及び重水を作用させると完全に水素-重水素交換が完全に進行することをみいだした。この方法をアルキル直鎖を有する他の基質に対して適用すると、直鎖アルカンの末端メチルの水素-重水素交換がうまくいかない。そこで,脱炭酸反応を利用することにした。カルボニル基のα位は,エノール型を経由することにより,容易にH-D交換が起こるので,脱炭酸を利用すれば重水素化されたカルボニル基のα位が末端メチル基となるので,結果としてCD_3基が合成できるはずである。実際,炭酸を利用した-CD_3基の導入を実現することができた。
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