研究概要 |
フォトリフラクティブ効果とは,光を吸収することによって屈折率が可逆的に変化する現象である.光吸収で屈折率が変化する現象には様々なものがあるが,光吸収による電荷分離状態の形成と電気光学効果の発生というメカニズムを経て屈折率が変化するものを特にフォトリフラクティブ効果と呼ぶ.フォトリフラクティブ効果は,二次元光信号(画像信号)の制御や演算に直接応用できるため,優れた材料の出現が待たれている.フォトリフラクティブ物質中でレーザー光を干渉させれば,屈折率の値が周期的に変化した格子縞(屈折率格子)が形成される.フォトリフラクティブ効果を示す物質は,光導電性化合物,電子捕捉剤,電気光学応答性化合物(電圧によって屈折率が変化する)の3成分で構成される.このような物質中でレーザー光を干渉させると,先ず干渉縞の明るい部分で光導電性化合物が光を吸収して正負の電荷が発生する.電子は捕捉剤に捕捉されて動けないが,正電荷(ホール)は,熱的に全体に拡散する.すると,明るい部分はマイナスに,暗い部分はプラスに帯電する.その結果,干渉縞の明るい部分と暗い部分との間に,電界(内部電界)が発生する.この電界によって電気光学効果が誘起され,屈折率が変化する.本研究では,光導電性化合物と電荷発生剤をドープした強誘電性液晶中で,光の干渉によって内部電界を発生させ,それによって強誘電性液晶の自発分極の変化を誘起する試みを行った.強誘電性液晶では自発分極ベクトルの方向の変化によって液晶分子の向きが変化する.一般の分子配向変化型フォトリフラクティブ効果が,内部電界に分子の双極子モーメントが応答して生じているのに対して,強誘電性液晶のフォトリフラクティブ効果は自発分極というバルクの分極が内部電界に応答する.強誘電性液晶の自発分極の電界応答は非常に高速であるので,フォトリフラクティブ効果の応答の高速化が可能である.
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