研究概要 |
本研究はスメクティック液晶を利用した内部構造の自己再生および構造創生機能を有する知能化された柔軟な粘弾性組織の開発を目指すものである。昨年度の微小変形下でのスメクティック液晶の構造維持効果を発展させて,本年度はスメクティック液晶の配向構造による固体的特性の制御,すなわち電場による降伏応力の制御について検討を加えた。具体的には電場を加えられるように改造した応力制御型のレオメータを用い,一様な配向状態を作り,せん断応力を加えたときの変形特性から降伏応力を算定し,直流,交流電場とその電界強度による影響について検討し,以下の点を明らかにした。スメクティック相では無電場下でも降伏応力を示すが,印加電圧がある値(閾値)を越えると,直流電場下では降伏応力が増加し,その後一定になる現象が得られた。一方,交流電場ではある値から降伏応力が減少する傾向が得られ,その減少量には周波数異存性があることが確認された。さらにその閾値電圧は交流と直流では異なり,直流の方が低電界強度でから降伏応力の変化が現れることがわかった。これらの点から,スメクティック液晶を用い,印加電場および電圧を調整することにより降伏応力を10倍程度の範囲で制御できる,すなわち固体的な特性を電場で制御できることが明らかになった。さらに,そのメカニズムを解明するために降伏時の構造変化を偏光下で観察し,あわせて二色性等の変化も測定した結果,交流電場下では比較的脆弱なモノドメイン的構造ができているのに対し,直流電場下では強固な配向構造ができていることが考えられた。続いて,分割電極を用いた非一様な配向構造の形成とその降伏特性についても検討を加えた。
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