研究概要 |
本研究では離れた位置がらレーザー照射あるいは低周波超音波加振により構造体に大振幅ガイド波(表面波,板波,円筒ガイド波等)を励起し,表面あるいは表面直下の微視損傷(き裂)面のクラッピングで散逸されるエネルギによる局部温度上昇を,赤外線サーモグラフィにより離れた位置で検出する非接触広域構造不健全部検出法の基礎を確立することを目的とする. 本研究で得られた主な成果を以下に示す. 1.現有のYAGパルスレーザー源では,極低周波の弾性波しか励起できなかったので,プラスチックフィルム接合用の超音波溶接機供振周波数28kHz,最大出力150W)を用いて,ほとんど閉じた疲労き裂を含む試験片のき裂部近傍を加振し,適切な入射条件の下では,0.5K程度の温度変化が加振後1秒以内に生じ,市販の非同期赤外線カメラで温度画像として収録できる. 2.この実験結果に対応する有限要素法振動解析により,測定したき裂を含む試験片は28kHz近くの固有振動数を持ち,その振動モードはき裂面が面外せん断モードであることが明らかとなった.数値解析により,面内の縦振動モードも励起されることが明らかとなったが,実験ではこのときには有意な温度上昇は観察できなかった. 3.重量2キログラム程度の可搬式超音波溶接機を用いて低周波大振幅の波をほとんど閉じたき裂を含む構造要素に入射し,赤外線温度カメラで0.3K程度の温度変化を検出する方法で表面き裂の検出が可能であることが確認できた.
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