研究概要 |
高サブクール水中の薄膜伝熱面を直流電源を用いてステップ状に直接通電加熱する実験を行い,併せて沸騰開始前に形成される温度境界層ならびに過熱液層に関する数値計算を行った.沸騰開始時の気泡高さの高速度ビデオ画像(400fps)による計測結果と数値計算による過熱液層厚さを比較したところ,本計算による沸騰開始時の代表的液膜厚さ(25μm)と実測された初生時の気泡サイズは概ね一致した.また,沸騰開始条件が,初期サブクール度によらず,壁面過熱度ならびに過熱液層厚さによって与えられることを見出した.このような知見は原子炉の想定反応度事故における蒸気ボイドによる反応度抑制効果(ボイドフィードバック効果)の予測等のために有用な知見である.この結果については日本原子力研究所の研究委員会等で報告した. 強い温度勾配を有するマイクロ温度境界層では,境界層を通過する光線が大きな屈折を受けるため,干渉計による計測は一般に困難である.本研究は,逆に屈折を利用して軸対象温度境界層の温度分布を測定するという着想に基づいている.屈折光の検出には直進参照光との干渉を用いる.当初からマイクロ温度境界層による実験を行うことは困難であるため,スケールアップした実験により成立性の確認を行うこととした.試験部は大気圧の空気中に設置した直径2mmのステンレス管であり,スイッチング回路に寄り急加熱した.He-Neレーザー(波長632.8nm)を,直径4.90mmの平行光とし,スプリッタによって分光された被検光を試験部にわずかに接するように調整した.試験部から比較的近い位置で参照光と干渉させれば,通常のマッハツェンダー干渉計と同様に直進成分の位相変化による干渉縞が得られるが,境界層厚さにくらべてはるかに大きな距離で屈折による影響が支配的となり,境界層外を直進する光との干渉によって,経路の温度分布に依存した干渉縞を生ずることを光線追跡計算と実験により確認した.
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