研究概要 |
現在の計算機で数10億年もかかる因数分解が数分で解けてしまう可能性があるとの衝撃的なアナウンスメントから,量子計算が脚光を浴びている。その動作には制御ノット操作が必要であるが,制御光子1つが存在したときのみ,信号光子の位相が180度変化するような「量子位相ゲート」を構築できればこの動作が可能である。これまで研究代表者らは(001)GaAs基板上に成長したZnSピラミッドによって3次元微小光共振器の研究を進めてきた。 これまでのピラミッド共振器はGaAs基板上に成長したZnSピラミッドからなっていたが,共振波長の400nm付近ではGaAsが吸収媒質となることから,これを透明媒質からなる分布反射ミラーとすることによって特性の向上が図れないか検討を加えた。その結果,分布反射ミラーが95%くらいの高い反射率を有していても,ZnSピラミッドとの反射位相が適当な条件にならないと,位相関係によって反射率が低下する課題が生じた。この問題を理論的に検討したところ,分布反射ミラーの周期を20〜30周期に増して,反射率もさらに増大すれば,位相関係によらず高い反射率を維持し,ピラミッド共振器の特性が向上することがわかった。また別の方法として,GaAs基板を選択的にエッチングして除去し,ZnSよりも低い屈折率を持つ誘電体薄膜に置き換える方法を開発し,共振モードを確認している。 このような微小共振器に単一の光子を導入する準備として,単一量子ドットから発生する光子が一つずつ発生していることを,いわゆるHBT相関測定系を用いた2次の光子相関測定におけるアンチバンチング特性から確認した。この測定系を用い,昨年度から検討を進めているソリッドイマルジョンレンズによるピラミッドに入射する光との結合効率の向上をはかった。これらを組み合わせて,ピラミッド内部に挿入した量子ドットによる反射スペクトル測定に成功した。今後単一光子の吸収飽和を利用した量子位相変化の検討を進めていく。
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