研究概要 |
平成15年度科学研究費補助金により作成した「海氷生成実験装置」を用い,平成16年度は海水中にメタンをバブリングしながら種々の条件下で海氷サンプルを生成し,生成した人工海氷の顕微鏡組織、ブラインや気泡の密度・空間配置などについて観察し,統計的な分析を行った.平成17年度はより大きな氷厚(200mm)の海氷の生成を試みたが、水深に対する氷厚が過大であったため、従来の結果との連続性に疑義が生じた。そこでより水深の大きな海氷生成装置を自作した。また、結氷前と成長後のメタンの収支から,明らかに海氷成長過程でメタンの一部が外部に散逸していることが認められたため、新海氷生成装置は上部を開放せず、ゴム膜によって密閉した。その結果、海氷生成過程において海氷表面からヘッドスペース(擬大気)に有意のメタン放出があることが明らかになった。 数値シミュレーションでは,平成16年度に構築した3次元ボロノイダイナミクスによる結晶微視組織生成シミュレーションプログラムを用い,海表面近傍に生成した結晶核の成長とブライン形成について調べた.最終的な結晶組織のシミュレーション結果と実験的に観察されるものを比較したところ,海氷組織やブライン形成には結晶のa軸方向とc軸方向の成長速度の異方性が大きく影響していることがわかった.淡水氷には見られないこのような成長速度の異方性を適切にシミュレーションに反映させた結果,海表面近傍のブライン体積比として実験的に得られている値に近い妥当な結果が得られた.また,ブラインは結晶の粒界4重点や3重線に多く濃縮・形成され,一部は粒界面に沿って散在する様子なども観察された.
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