研究概要 |
本邦で多産するクリストバル岩(珪藻土を含む)に着目し,これらが放射線遮蔽材の基礎素材として優れた特性を持っていることを明らかにした.その主なものとしては,1)資源として大変豊富である,2)ケイ素,アルミニウム等の放射化されにくい元素で構成されている,3)水素(シラノール基として),リチウム,ホウ素等の中性子遮蔽効果のある元素を含んでいる,4)熱に強い(約1700℃まで安定),5)多孔体なので必要な元素の添加などの操作(機能改良)が容易である,6)人体(生物)に有害な元素が極微量である,7)中性子による放射化で問題となるコバルト,ユウロピウムを含まない,8)フッ化水素酸以外に対する耐酸性に優れる,9)放射性生体構成元素を形成しない,等である. 一般に放射線遮蔽材に求められる特性は,a)できるだけ二次ガンマ線を発生させないこと,b)放射化しにくい元素でできていること,c)放射化した場合でも,半減期が短いか,極端に長い元素であること,d)放射性生体構成元素を生成しないこと,e)人体(生物)に有害な元素を使用しないこと,f)遮蔽材が放射線遮蔽で発生する高熱に耐えられること,g)再利用や副生成物の回収が容易であること,等であり,クリストバル岩は何れの条件も満たしている. 研究結果をまとめ,クリストバル岩(珪藻土を含む)と普通コンクリートとを対比すると,α)クリストバル岩は普通コンクリートに比べ,同じ質量当たり約2倍の中性子遮蔽性能がある,β)クリストバル岩は比重が小さい(クリストバル岩をペレット状にしたものが見かけ比重0.67以上であるのに対して,普通コンクリートは2.36である.),等の利点がある.従って,熱中性子吸収断面積が大きいホウ素やハフニウムを吸着させることにより,クリストバル岩はコンクリートよりも優れた放射線遮蔽材となる.また,ハフニウムは大変高価であるが,ランタノイド収縮を起こしているために電子密度が高く,クリストバル岩に大量に添加すれば,中性子と同時にガンマ線遮蔽効果を持つ遮蔽材にもなる.
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