研究概要 |
放射性核種の中で重要なヨウ素(I)のセメント系吸着剤への吸着挙動を窒素雰囲気下のグローブボックス中で,バッチ法で検討した.合成した純粋なAFtを20.0mMのKIO_3溶液(液固比100mL/g)に浸漬させ,42日間浸漬後,試料の上澄み溶液のI濃度をICP-AES(島津製作所,ICPS-1000IV)を用いて測定し,収着が平衡状態に達していることを確認した.この試料を孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いて固液分離して,脱離実験のためのIO_3^-を収着させた固相試料を得た.IO_3^-を収着させたAFt 0.0900gを,H_2O,20.0mM K_2SO_4溶液,20.0mM K_2SO_3溶液,AFt溶解液(全てKOHを用いてpH 10.6に調整済み)の各9mlの脱離液(液固比100ml/g)に浸漬させた.浸漬期間は1時間〜42日間とした.一定期間浸漬後,メンブランフィルターを用いて固液分離し,液相についてはpH,及びICP-AESを用いてAl, S, Ca, I濃度を測定した.また,イオンクロマトグラフィー(島津製作所,LC-VP)を用いて,脱離したヨウ素のスペシエーションの測定を行った.固相については,アセトンで洗浄した後,真空乾燥させ,得られた粉末試料に対して,powder-XRD測定を行なった. 本研究の結果から、各脱離液によってIO_3^-は,約1%〜8%脱離することがわかった.また,K_2SO_4溶液やK_2SO_3溶液による脱離量が,H_2OやAFt溶解液に比べて多いことから,AFt固相中のIO_3^-が,SO_4^<2->やSO_3^<2->と置換したと考えられた.さらに,K_2SO_3溶液による脱離量が最も多いことから,IO_3^-との置換にイオンの構造が関係している可能性が示唆された.しかし,K_2SO_3溶液を用いた上澄みのpHが初期のpHよりも高くなっていたことから,pHの違いにより脱離が促進されたことも考えられた.また全ての脱離液について,1日目以降,IO_3^-の脱離割合が時間とともに減少している.このことから,脱離したIO_3^-が固相に再収着した可能性が示唆されたが,この挙動について今後更なる検討を要することがわかった.さらにIO_3^-をAFt合成時に添加したヨウ素酸型AFtからの脱離実験も行っており,その結果との比較も行った.
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