研究課題/領域番号 |
15657019
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
動物生理・行動
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保 健雄 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10201469)
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研究期間 (年度) |
2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2003年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
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キーワード | ミツバチ / 攻撃行動 / 利他的行動 / 脳 / ウイルス / 社会性昆虫 / 感染 / 遺伝子 |
研究概要 |
ミツバチは社会性昆虫であり、女王蜂(生殖カースト)が専ら産卵し、働き蜂(労働カースト)は育児や門番、採餌などの労働に携わる。ミツバチの働き蜂の天敵への攻撃行動は、自身が死亡する可能性が高い点で利他行動の代表例である。本研究では、働き蜂の攻撃行動を規定する分子的基盤を解析する目的で、攻撃的な働き蜂の脳で選択的に発現する遺伝子を検索した結果、攻撃蜂の脳に選択的に感染している新規なRNAウイルスを同定した。 最初に、囮であるオオスズメバチに攻撃を仕掛けた働き蜂(攻撃蜂)と、スズメバチから逃避した働き蜂(逃避蜂)を採集し、それぞれの脳からRNAを抽出した。Differential display法により、攻撃蜂の脳に選択的に存在するRNAを検索した結果、kakugoと命名したRNAを同定した。cDNAクローニングの結果、kakugo RNAは様々なピコルナ様ウイルスのポリプロテインと有意な相同性を示すタンパク質をコードすることが判明した。このことは、kakugo RNAが新規なウイルスのゲノムRNAであり、攻撃蜂の脳はこのウイルスに感染していることを示唆している。また、攻撃蜂の細胞粗抽出液をショ糖密度勾配遠心により分離したところ、kakugo RNAは遊離のmRNAの他、ウイルス粒子に相当する分画にも検出された。さらに、攻撃蜂の細胞粗抽出液を非感染の働き蜂に注射したところ、3日後の脳でkakugo RNAが増幅していることが判明した。このことは、kakugo RNAが確かに感染性のあるウイルス粒子を形成することを示唆している。さらに、kakugoウイルスは攻撃蜂の脳では検出される一方で、育児蜂や採餌蜂では検出されず、攻撃行動とkakugoウイルスの感染が密接に関連することが示された。本研究は、動物の本能的な攻撃行動とウイルス感染が関連することを最初に示唆した点で学術的に価値が高い。
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