研究概要 |
遺伝子改変マウスの作出は,複雑なin vitroでの遺伝子操作,ES細胞の培養,そして胚操作による個体の作出など,多数のステップからなる長期の綿密な実験を必要とする.本研究では大腸菌内相同組換え法を導入することにより,BACクローン上で迅速に遺伝子改変を進める遺伝子構築技術を確立する.このため,セレクションマーカとしてジフテリア毒素Aフラグメントを発現するベクターを改変し,Srf I, Pme Iなどのrare restriction siteを組込み、ES細胞に導入する際に直鎖化するのに便利なプラスミド,pBSDT-AIIを作成した.次に,ES細胞内駆動用PGK promoterと大腸菌内用EM7 promoterのキメラプロモータを使用し,さらにはES細胞内でNeoを選択的に除去できるようにするため,flp recombinaseの認識サイトとlox Pを両端にもつ遺伝子カセットをもつプラスミド,pGPS21loxFRTNeoを作成した.このカセットを実際にES細胞内に形成導入した結果,ES細胞にG418耐性を付与することが示された.さらに第三のlox Pを挿入するため,pMODloxZeoDAmp-3を構築した.このplasmidはTn5のtranspositionに必須な領域に挟まれた形でloxP-Zeo-loxPカセットを有しており,試験管内での反応により,カセットを任意のDNAに挿入することができる.これらの遺伝子モジュールを用いてmVam2, V-ATPase a3について遺伝子破壊を進め、キメラマウスの作出と遺伝子破壊マウスの作成に成功した.本手法の導入によって多細胞生物の遺伝子変換の最初のステップをきわめて効率化・迅速化することができた.
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