研究概要 |
本研究では、メヒシバ、チカラシバなどのイネ科雑草に寄生するクロボ菌を用いて、これらの感染機構を明らかにするとともに、その結果をもとに有効な接種方法を確立し、繁殖制御効果を検定することを目的として研究を行った。研究概要は以下のとおりである。 (1)メヒシバ、ヒエ、ギョウギシバ、チカラシバなどのイネ科雑草に寄生するクロボ菌5種(Ustilago syntherismae, U.sphaerogena, U.cynodontis, Spacelotheca pamparum, Moesziomyces bullatus)について、日本各地および中国よりクロボ胞子を採集し、その発芽力を維持するため、低温に保存した。また同時に、これらの宿主植物の健全な種子も採取し、保存した。 (2)採集した上記クロボ菌の乾燥標本を作製し、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡による観察を行い、その形態を明らかにし、種名の確認を行った。 (3)上記5種のクロボ菌を発芽させた後、担子胞子を形成させ、担子胞子由来の培養株の確立を行った。 (4)クロボ胞子を用いた宿主植物への有効な接種方法について検討した結果、クロボ胞子を土壌中に混入することにより、幼苗に効率的に感染させることができた。 (5)メヒシバおよびヒエに寄生する2種のクロボ菌について、クロボ胞子による宿主植物への接種試験を行い、その感染部位、感染率、感染程度、宿主の生育、種子形成率等の調査を行った。その結果、クロボ菌の感染により、宿主の生育には大きな影響は及ぼさなかったが、種子形成率は大幅に減少することが明らかとなった。 (6)以上の結果、クロボ菌を用いることにより、イネ科雑草の繁殖を制御できることが明らかとなった。
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