研究課題
萌芽研究
有機固相合成法は、不溶性の固相担体にリンカーを介して反応部位を結合させ、固相担体上で反応を行うものである。これにより、各反応段階で抽出や精製を行うことなく化学合成を効率的に進めることができる。また、固相合成法は、分離精製に用いる有機溶媒の量を減らすことができ、環境負荷を軽減した次世代型の化学合成法である。本研究では、固相担体に磁性ナノ粒子を採用する。このことにより、有機固相合成法に、磁気分離という従来にないオルソゴナルな分離・精製手段を導入するので、合成手段の次元を一つ広げることができる。また、担体をナノサイズにすることにより、従来利用されてきたポリスチレンビーズ等の担体表面による立体障害を緩和するので、液相反応に近い状態で反応させることができる。これらの点は、固相合成法に革命的な進歩をもたらすと期待される。今回、ナノサイズの四三酸化鉄を担体として用いることとし、これに配位可能ないくつかの分子を設計した。とりわけ、四三酸化鉄ナノ粒子に配位したリン酸誘導体は、磁力により四三酸化鉄とともに回収し、強酸によって四三酸化鉄から分離することに成功した。配位分子1つあたりのリン酸基の数を変化させ、四三酸化鉄ナノ粒子への配位量についても検討した。また、リン酸型配位子部分から外側に延びた部分にいくつかの官能基を導入し、当該分子を四三酸化鉄ナノ粒子に配位させた状態で、官能基変換や縮合などの反応を行う応用研究も検討した。本研究期間中に、四三酸化鉄ナノ粒子を担体とする固相合成法の基礎的な検討を行った。
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